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【腸閉塞になりかけの初期症状とは?】ブログで専門医解説!

腸閉塞(ちょうへいそく)という病気をご存知でしょうか。
初めて聞いたという方も多いかと思います。
腸閉塞とは簡単にいうと、腸(小腸や大腸)が詰まってしまう病気です。
腸が詰まると、便やおなら(ガス)が出なくなるため、腸閉塞になりかけの初期症状としては、「おならが出ない」「便が出ない」といったものが出てきます。
おならが出なくて困っている人は、ただの便秘ではなく、腸閉塞になっている可能性があります。
このブログでは、腸閉塞になりかけの初期症状・原因・食事などの予防について、どこよりもくわしく解説します。
それではどうぞ!
(本記事は、消化器病専門医の中村孝彦医師が記載しています)

「ただの便秘と油断していると腸閉塞になることも!」


腸閉塞になりかけの症状とは?


便秘が続いていて、おならが出ない(ガスが出ない)、お腹全体が張ってチクチク痛い、気分が悪い、吐き気がする、長い便秘があるの症状があるときは、腸閉塞の初期症状・前兆の可能性があります。
ちなみに腸閉塞の初期症状であるお腹の張りの原因を分類すると以下の7つに分けられます。
①腸管ガスが溜まっている
②炎症があって押すと痛い
③癌が大きくなっている
④腹水が溜まっている
⑤内臓が腫れている
⑥腹壁ヘルニアがある
⑦胎児がいる

→参考:お腹の張りの原因の詳細  

腸閉塞でおならは臭くなる?ブログで医師解説!


腸閉塞になると、便やガスが完全に出なくなるのですが、腸閉塞に至っていない、なりかけの状態(サブイレウスといいます)では、腸の中で大腸菌などの腸内細菌が繁殖し、おならが臭くなる可能性があります。
他に、動物性たんぱく質や動物性脂質を取り過ぎても、おならが臭くなることがあります。

腸閉塞の原因は?


腸閉塞の原因としては、大腸がんや大腸ポリープがあって腸の中に溜まったおなら(ガス)や便の流れが悪くなってしまった可能性があります。
他に考えられる原因としては、お腹の手術をした後に腸がお腹の壁にくっつく「癒着(ゆちゃく)」という状態を起こした場合(癒着性腸閉塞;ゆちゃくせい-ちょうへいそく)や、ガスや便を送り出す腸の機能が悪くなり、機能的に腸が動かなくなってしまった場合(麻痺性腸閉塞;まひせい-ちょうへいそく)があります。
また、脂物などの食べ過ぎやストレスも腸閉塞の原因となります。
揚げ物などの脂肪分の多い食事は、炭水化物などの消化の良い食事に比べて、腸管の中での滞留時間がながく、宿便の原因になります。
ストレスがかかった状態や、過労の状態だと、腸の動き(腸蠕動:ちょうぜんどう、といいます)が悪くなるので、便やおならが滞留し、腸閉塞を引き起こすことがあります。
この中でも特に、冒頭に述べた大腸がんや大きい大腸ポリープによっての流れが悪くなっている場合は、癌やポリープ自体が命取りになる場合があります。

腸閉塞の診断は?


腸閉塞の診断は、お腹のレントゲン検査で行います。
上の写真は、お腹のレントゲン写真ですが、矢印で示した黒い影の部分が全て、腸閉塞によって異常に拡張した腸管(この写真の場合は小腸)になります。
正常な状態でも、お腹のガスはレントゲンで映るのですが、レントゲンで見える腸管の拡張が、概ね小腸で3cm以上、大腸で6cm以上みられると、腸閉塞の診断となります。
腸閉塞でお腹の動きが停止することで、下の写真のように腸に溜まった腸液が喫水線のように、黒い影の中に定規で引いたような横線のラインがレントゲンで映ることも多いです。

腸閉塞の治療方法を教えて!


腸閉塞になってしまうと、どうなるのでしょうか。
腸閉塞の治療には、内科的治療と外科的治療(手術)があります。
内科的治療としては、まず、止まった腸の動きを改善するために、腸を動かすお薬を使います。
具体的には、大建中湯(だいけんちゅうとう)や、モサプリド(ガスモチン)というお薬を使います。
大建中湯は腸を動かすだけでなく、動きの悪くなった腸の血流を良くする働きもある、腸閉塞にとても良いお薬です。
内服のお薬だけで限界がある場合は、お腹に溜まった便やガスを外に出すための長い管を鼻やお尻から入れたりします。
この管のことをイレウス管といい、3mもの長さの長い管で、例えば小腸の腸閉塞だと、鼻からこの管を入れて、腸が詰まっている場所まで先端を届かせます。
イレウス管は、下のレントゲン写真で白く映っている管です。

その状態で管の先から陰圧をかけて、腸が詰まってしまったことで貯留したガスや便を外に吸い出します。
イレウス管は長い管で先端を小腸に置くのですが、その代用として胃管という短めの管を入れて、先端を胃に留置することもあります。
イレウス管よりは効果が弱いですが、軽症の方では有効なこともあります。
内服療法やイレウス管といった内科的治療で腸閉塞の改善が見られないときは、外科的な治療(手術)を行います。
お腹の手術を過去に行ったことのある人は、手術のときにできた傷が治る過程で腸がおなかの壁に くっついてしまうことがあります(癒着;ゆちゃく、といいます)。
外科的な治療介入として、この癒着している部分を手術ではがす癒着剥離術(ゆちゃく-はくりじゅつ)があります。
通常、腸閉塞の外科治療はこの方法でうまくいくのですが、腸閉塞が重症化したりして閉塞した腸の部分の血流が悪くなった場合は、血流が悪くなった部分の腸を切除する手術を行うこともあります。
腸閉塞は放置すると、腸穿孔と言って腸に穴が開いてしまい、命に関わる場合もあります。
甘く見ずにしっかりと治療することが大事です。

 

腸閉塞で死亡する確率は?


関ジャニの大倉忠義さんなども患った腸閉塞ですが、実は死亡率の高い病気なのです
全国集計によると、腸閉塞での死亡率は全体で約7%となっています。
原因別にみると、過去の手術歴などが影響する癒着性腸閉塞の死亡率は約1.5%なのに対して、癌による腹膜炎などが原因となる癌性腸閉塞の死亡率は約40%と原因によってもかなり異なります。
いずれにしても、死亡率の比較的高い、怖い病気ということが分かりますね。

腸閉塞の入院期間は?


腸閉塞の入院期間は、短期間の絶食や、内服療法だけで良くなる場合は1週間以内となります。
しかし、イレウス管を入れたりする場合は2週間以上となり、外科手術が必要な場合は3週間以上になることもあります。
いずれにしても入院期間が数日以内となることは少なく、腸閉塞は再発も多い病気のため、腰をすえて治療を行う必要があります。

 

 

 

腸閉塞の予防に良い食事のレシピは?


腸閉塞の予防に良い食事のレシピは、消化に良いものです。
私はいつも、「白いものが消化に良いですよ」と説明しています。
白米、豆腐、白身魚、うどん、ヨーグルト、大根など、白い食べ物で思い浮かぶ食べ物は概ね消化に良い食べ物といえます。
また、腸閉塞にならないためには日ごろから食事以外の生活習慣にも気をつける必要があります。
水分をしっかりとって便秘にならない習慣づくりはもちろんですが、運動を習慣づけることが大切です。
人間がガスや便を送り出すには、腸の力だけではなく腹筋など様々な力を使っています。
この筋力を落とさないようにすることが重要なのです。
腸閉塞のリスクが気になる方は大阪の堺なかむら総合クリニックまでお気軽にご相談ください。

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腸閉塞になりかけの症状:お腹の張りの原因は?


次に腸閉塞になりかけの初期症状であるお腹の張りの原因について詳しくみていきましょう。
先に述べたようにお腹の張りの原因には以下の7つがあります。①腸管ガスが溜まっている。②炎症があって押すと痛い。③癌が大きくなっている。④腹水が溜まっている。⑤内臓が腫れている。⑥腹壁ヘルニアがある。⑦胎児がいる。
順にみていきます。お腹の張りの原因としてまず考えられるのは、腸管ガスの溜まりです。
口から入った食べ物は、胃や小腸、大腸の収縮運動(蠕動運動)によって肛門側に押し出されて排便されますが、このプロセスのどこかに異常が生じたときに腸管ガスが溜まります。
腸管ガスが溜まる一番の原因は、腸内環境の悪化です。
大腸にたどり着いた食べ物の塊は、腸内細菌によって分解されるのですが、その過程で腸管ガスが生じます。
腸内細菌にはたくさんの種類があるのですが、主に善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分かれます。
腸内環境のベストのバランスは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割がよいとされます。
普段は善玉菌が悪玉菌よりも多い良い腸内環境の状態が保たれているのですが、腸内環境が悪くなると悪玉菌が増えて、腸管ガスを大量に発生するようになります。
では、どうなると悪玉菌が増えるのでしょうか。
実は、悪玉菌のエサになりやすい食べ物を食べると、悪玉菌が増殖して善玉菌が減るのです。
悪玉菌が増えやすい食べ物は、小麦製品(パンなど)、果糖やブドウ糖の入った清涼飲料水などの精製食品があります。
また、キシリトールガムや、人工甘味料(アスパルテームなど)、お菓子などに良く含まれている保存料や乳化剤も腸管ガスの発生しやすい原因物質です。
逆に悪玉菌の産生を抑えて善玉菌を増やす食べ物は、納豆、味噌、ヨーグルトなどのプロバイオティクスと呼ばれる食品です。
また、呑気症(どんきしょう)といって、食事のときや緊張したときなどに空気を飲み込む癖がある方はガスが溜まりやすい傾向にあります。
呑気症は早食いの方に多い症候です。

女性はホルモンバランスの影響で便秘になりやすいのですが、便秘もガスが溜まる原因となります。
特に月経前は女性ホルモンの変動が原因でお腹が張りやすくなります。
女性は男性よりも骨盤が広い上に腸が長く筋肉量が少ないので腸のねじれや腸下垂が起こりやすいのも女性にガスがたまりやすい理由です。
大腸は主に便の水分を吸収する役割があり、お腹の左側の腸(S状結腸、直腸)にある便は十分に水分を吸収されて硬くなります。
便秘の人では、便が外に排出されないことによって、腸の中での滞留時間が増えて、さらに水分が吸収されて便が硬くなって出にくくなるという悪循環におちいります。
肛門に近い腸の出口付近の左側の腸に、この硬い便がたまっていくと、便が栓をするような形になり、その上流のガスが外に出れなくなります。
もう一つ、過敏性腸症候群という、ストレスで腸の動きが悪くなる病気があります。
ホルモンは問題なくても、この内容物を送り出す腸の蠕動運動が悪くなることでも腸管ガスが溜まります。
腸の動きが悪いことによってガスが溜まっている人は、ウォーキングなどの腹筋を使う運動の時間を生活の中で増やしましょう。

お腹が張って押して痛いときは虫垂炎や憩室炎


お腹が張るところを押して痛いときは虫垂炎や憩室炎が起こっている可能性があります。
虫垂炎は右下腹部の盲腸の先にある虫垂という臓器に炎症がおきる病気で、右下腹部の痛みが特徴です。
一方憩室炎は、腸の壁の筋肉がゆるんでできた窪みに便などがはまって炎症がおきる病気です。
憩室は右下腹部にある盲腸と上行結腸、左下腹部にあるS状結腸にできやすい病気なので、右下腹部もしくは左下腹部の腹痛が特徴的です。
この虫垂炎と憩室炎のいずれもが、初期にはお腹の張りだけとして自覚し、だんだん、お腹を押して痛い症状が強くなってきます。
この状態が悪化すると腹膜炎というお腹の膜全体に炎症が波及して命に関わることがあるので、お腹が張って押して痛みがある部分があれば早急に医療機関を受診してください。

お腹の張りの原因は癌?


お腹の張りは、お腸の中に存在する腫瘍が原因のことがあります。
腫瘍は悪性腫瘍、良性腫瘍の両方ありえます。
このカテゴリーで頻度の多い腫瘍は、大腸がん、肝臓がん、腎細胞がん、すい臓がん、そして婦人科臓器である子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮体癌、卵巣癌です。
これらは全てお腹の中に存在する臓器から発生した癌なので、腫瘍が大きくなるとお腹の張りとして自覚し、場合によってはお腹の外から明らかに腫瘍を触れることもあります。
大腸がんの可能性を調べる検査は、大腸内視鏡検査になります。
他の癌や良性腫瘍は、腹部エコーで診断することになります。
もし癌であった場合は、すこしでも早く治療することが重要なので、急にお腹が張ったり、急に体重が増えてきたら、医療機関を受診してください。

お腹の張りの原因は腹水?


お腹の急速な張りが、太ったせいかも、と思っていたら、お腹に大量の腹水が溜まっていることがあります。
腹水とは文字通り、お腹の壁と内臓の間の空間に溜まった余分な水のようなものです。
腹水が溜まる原因として多いのは、肝不全、心不全、腎不全による体の水分バランスの異常です。
そしてもう一つ重要なのが、癌の末期に出現する癌性腹水です。
癌性腹水は、お腹の腹膜という膜やリンパ節に転移した末期がんで出現します。
また、腹水に血が混じる血性腹水という病態もあります。
血性腹水の原因として多いのは、子宮外妊娠、卵巣出血のほか、肝臓がんや卵巣がんからの出血です。
これらの腹水、血性腹水も腹部エコーで迅速に診断することができます。

お腹の張りの原因は内臓が腫れているから?


お腹の張りの原因は、内臓の腫大かもしれません。
代表的なものは、アルコールの飲みすぎによる急性肝炎(肝臓の腫れ)、肝硬変による脾腫大(脾臓の腫れ)、水腎症や腎嚢胞による腎腫大(腎臓の腫れ)があります。
これらも腹部超音波検査で比較的簡便に診断することができます。

お腹の張りの原因は腹壁瘢痕ヘルニア?


腹壁瘢痕(ふくへき-はんこん)ヘルニアとは、手術後の傷跡が外からみて大きく膨らむ病気です。
お腹の手術の合併症のひとつで、術後10年間で約1割の方に生じるとされます。
膨らみは、立った時、咳・くしゃみ、排便時などの腹圧がかかった時に大きくなることが多いです。
一方で、あおむけに横になるとお腹がぺたんこに戻るのが特徴です。
症状が無くてお腹のふくらみとだけ感じる人もいますが、腹壁瘢痕の穴に腸管が出たり入ったりする場合は痛みや食後の腹部膨満感を訴える方もいます。

女性のお腹の張りの原因は妊娠?


月経不順があった場合、まさかと思っても必ず調べておくべきなのが、妊娠の可能性です。
当院でも、最近急に太ったといって受診され、妊娠反応が陽性になった方がおられます。
また妊娠に、これまで述べた①〜⑤の病気が合併していることもあるので、仮に妊娠であることが分かっても、腹部エコーなどでしっかりと調べることが大切です。

お腹が張るときの治療薬は?


お腹の張りの原因が悪性腫瘍や婦人科系疾患の場合、手術が必要になることが多いので、まずは医療機関にご相談ください。
お腹が張る原因が腸管ガスのときの薬の基本的な考え方は、
①お腹を動かしてガスを出やすくする
②便と一緒にガスを出す
③ガスを発生しづらくする
④腸内環境を整えて、善玉菌を増やす
の4つです。
それぞれみていきましょう。


①お腹を動かしてガスを出やすくするのによい薬には大建中湯、モサプリド(ガスモチン)があります。
大建中湯は漢方ですがエビデンスが豊富で、主に大腸の血流をよくすることで、大腸の動きをよくする効果があります。
一方、モサプリドは胃や小腸の動きをよくするお薬で、食欲低下や胃もたれなどの治療にも用います。

②便と一緒にガスを出すのによい薬は、グーフィス(エロビキシバット)です。
グーフィスは腸管刺激性便秘薬に分類される薬ですが、胆汁酸をふやして腸液を増加させる作用と、腸管の動きをよくする作用の2つを持つので、便と一緒にガスも出すことができます。

③ガスを発生しづらくするのによい薬は、ガスコン(ジメチコン)です。
ガスコンは消泡剤に分類される薬で、発生したガスや泡の表面張力を下げることでガスを発生しづらくします。
大腸ガスよりも小腸ガスに対してよく効く薬です。

④腸内環境を整えて、善玉菌を増やすのによい薬は、ビオフェルミンやミヤBMです。
ビオフェルミンには乳酸菌、ミヤBMには酪酸菌が含まれていて、それぞれ善玉菌を増やして腸内環境をよくする作用があります。
善玉菌が増えると、メタンガスなどを産生する悪玉菌が減るので結果として、ガスが出にくくなります。

【 まとめ 】


いかがでしたでしょうか。

今回のブログでは、腸閉塞について解説しました。
日頃、慢性的な便秘を抱えている方や、過去にお腹や婦人科の手術をしたことのある人は腸閉塞のリスクです。
また、大腸がんや大腸ポリープも腸閉塞の原因となることがあります。
大阪の堺なかむら総合クリニックでは、腸閉塞予防の慢性便秘の治療や、大腸がんや大腸ポリープの大腸カメラを使った内視鏡的切除(お腹を切らずに治療)に積極的に取り組んでいます。
慢性便秘でお困りの方や、腸閉塞のリスクが気になる方はお気軽にご相談ください。

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堺なかむら総合クリニックでは「下剤を飲まない大腸内視鏡検査」も行っているので、下剤を飲むのが苦手で大腸内視鏡検査を敬遠している方も是非当院までご相談ください。

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腸閉塞のことを詳しくなかった方にとってこのブログが参考になれば幸いです。

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